ねじを3DCADでモデリングすると、通常は歪みが発生します。
三次元CADでのモデリングは、二次元上のスケッチ平面にねじなら三角の山を描き螺旋にスイープ(軌道に沿って)させソリッド化(中実立体化)させるのですが、内径側と外径側に距離差がある事と螺旋軌道に沿ってスイープさせる際に山断面とリード角にはベクトル差が生じ必ず歪みが発生します。

ソリッド体への複雑なスイープ操作は基本的に歪みます。

ねじをモデリングする際には、モデリング後に任意断面を何か所か断面にして、どの断面でも正確なねじ山寸法になっているか確認し、モデル全体に歪みが発生していないかゼブラ解析やレンダリングして確認します。

任意断面で正確な山形を持ったねじモデル

上記画像は、通常のモデリング手法と異なりシンプルな線をスイープしモデリングしたねじモデルですが、任意の断面で切断し山形を二次元CADで測定しても各山全て正確な山断面を持たせてあります。

Fusion360にて、このモデルを設計した際に断面計測でも解析でのメッシュも正確になっていたのですが、画面表示やゼブラ解析、レンダリングでの出力結果にて外径R付近に歪みが見られたので原因を調べた結果、Fusion360でボディ毎に設定できる「詳細コントロール表示」設定がアダプティブになっていました(標準はアダプティブ)固定を選択し詳細レベルを「高」に設定しレンダリングすると下の画像になります。

M10 P1.25 6g 規格中心値でのモデル

もっと格子状の照明があれば分かりやすかったのですが、とりあえず標準の照明でレンダリングしてみました。

アダプティブ   ↔    固定「高」表示

ゼブラ解析(横100縞)表示上は「高」でも歪みが観察できますが、表示精細度なりの歪みのようなので画面表示上の問題かと思われます。

CADだから正確に描けそうなのですが、3次元CADでのねじは意外と難しいです。二次元CADなら必ず正確ですが、三次元はモデリング方法によってずいぶんと変わります。

以前使用していた国産CADでのモデルとFusion360でのモデルを比較すると以下のようになります。(Fusion360でも素直にモデリングすると内外径Rとフランク面交線付近で歪みが出ますので、このモデルは方法を変えています)・・以前のCADで外径Rを付けると歪みが大きくなるので山頂フラットでモデリングしてあります。

国産CAD   ↔   Fusion360
重ね合わせ表示させた画像

モデル正面表示の単体では歪みやそれぞれのモデルの違いが分からないので、重ね合わせ表示させてみました。

国産CAD   ↔   Fusion360
国産CAD   ↔   Fusion360

縞数5本でのゼブラ解析比較では国産CADモデルの谷径R付近に局所的な歪みが見られフランク面も写真中央付近でなだらかに歪んでいるように観察出来ます。曲率表示ではフランク面中央付近のねじ外径側に局所的な屈折があるように観察されますので、1/4断面ごとに各断面間のフランク面中央付近が膨らむような形状になっています。(指定断面で山断面が正確にモデリングされるようコマンドしています)

国産CAD   ↔   Fusion360

3DCADでのモデリングでは、断面間の歪みを減らすため断面分割数を増やして精度を上げる手法も有りますが、データは巨大になって行きますので解析等を実行すると大幅な時間が必要です。また、それ以前にメッシュを切った際にモデルが不均一なのでR部等のメッシュに乱れが生じてしまい正確な解析は出来ません。・・・ここで5年間以上ムダな努力をしてしまいました。

ただ、とくに拘らなくても、
製品のサンプルモデルや工程設計等では少々歪んでいても分からないし、3Dプリンターでねじ部をプリントしても普通に使えます。解析も一応出来ますが、昨年CADを変更した際に旧ねじモデルでの解析結果は全て廃棄しました。
現在のモデルでの静解析結果ボルト単体は下の画像になります。総合応力表示ではおねじに作用した全ての応力が表示されますので、各山での接触応力は接触応力の方が判断しやすいかと思います。CAE解析結果ですので実際のねじの応力分布を示すものではありません。・・・実際は測れないので、、フンイキです。モデルの精度が悪いと各山への分散が進み良い感じになるのですが、モデル歪み分の弾性が作用しているかと思います。精度が高ければ口元から3山分散くらいになり抜け際チャンファーの一部に反応が出ます。

総合応力表示  ↔   接触応力表示

解析等で正確なねじモデルが必要な方がいらっしゃいましたら、モデルを供給します。

*スマートフォン等での表示速度を改善するため、ホームページの設定「画像の遅延読み込み」をしていたのですが、比較表示が読み込まれないようですので解除しました。一部デバイスにて表示が出来なく恐縮です。

以上、メインCADを変更しなければならなかった理由は「ねじ」でした。

昨年の夏にFusio360で高精度な「ねじ」がモデリング出来ることを知って、ショック落ち込み、慣れていたCAD環境を変えるとモデリング速度が低下し生産性が低下するので嫌だったのですが「ねじ屋なのに・・」と考えてしまい変更しました。以来一度も国産に触れていませんが、住めば都で慣れてしまい以前よりモデリングが速くなっています。アメリカ製なんで全てが合理的で細かなところで困る事が有っても、生産性はとても高いCADです。細かな不便さはフォーラムで解決して頂いています。ユークリッド空間座標が捉え難いので、慣れないと座標認識がし難いかも知れませんが、そもそも座標を認識しなくてもモデリング出来ます。ただ、CADとNC機座標を合わせ考える時に、ちょっとだけ迷子になります。でも、CAM機能使わない私が未熟なせいなので、、これも意味無いです。表現し難いのですが「感覚的に二次元的要素が殆ど無いCAD」です。