先日権利化した「雌螺子」特許の出願書では「ねじの疲労を改善する」と謳っています。

権利化された事から、実試験でのデータを取ろうとと思い試験機関にねじの比較疲労試験の見積りをお願いしていましたが、回答を頂いた金額が70万以上との事で、実試験は今の弊社にはとても実現出来そうにありません。

ねじの疲労破壊試験は「低サイクル引張試験機」で疲労破壊されるまでをSNチャートにして実施するのですが、疲労破壊されるまで長時間振幅させるので油圧のオイルを継ぎ足したりし、長いときは何日もかかる試験なので高額だそうです。

さらに雌ねじ口元にて疲労破壊する確率は65%程度ですので、比較サンプル毎に何回も繰り返し試験を実施しないと有用なデータは得られ無い事になります。

低サイクル疲労試験機のメーカーによる違いまで知りませんので全ての試験機が油を補充続ける必要が有るか知りませんが、本当に大変な試験です。

まずは、安定したプレハードン鋼とかを使用して試験片を旋盤で数十個作り、引っ張り試験と締め付けトルク試験を実施し、余裕があったらゆるみを調べるため振動試験を実施したいと思います。

Helico螺旋のゆるみ性に関してとても興味が有り、
もし学んだ事が正しければ、口元での応力集中が少ない構造から各山フランク面にそれぞれ適切な軸力が伝えられるのでゆるみ難い。
または、CAEの解析では口元で偏りの有る応力集中が発生して一部がクサビを打つように観察されているので、それを取り去るHelico螺旋はゆるみやすい。

ゆるみ性に関しては、おそらくどちらかに極端に違った結果が出るハズですが、ねじ締結時に給油する方が良いとされる事と同じ内容の形状になりますので、一般論で考え難い結果が出たくれる事を期待しています。

引っ張りはおそらく比較しても変化が無いハズです。単純にボルトの強度通りの値が出ます。

締め付けトルク試験は軸力に対し締め付けトルクが低くなります。これは螺旋に導入部を設ける構造で給油する事と同じ内容なので確実に低いデータがでます。

締め付けトルクが低いのに何故ゆるみ難いと思うか?
通常の雌ねじをトルク法で締付けると、軸力が増すに連れ口元では応力集中が発生し締付けによる回転はねじ部の回転と一致しなくなり、軸がねじれて行きます。弾性変形した軸はいずれ戻ろうととして、初期ゆるみの大きな要因となります。増し締めの際も率は小さくても同じ事が起こりますので、口元部をスムーズにする事で締め付けトルクが低下するHelico螺旋は軸の回転方向での変形が小さくなりゆるみ難いことになります。
各山へ軸力を分散出来る性質も有り、ねじ本来のゆるみ難さを取り戻してくれる事を期待しています。
(一般的にボルト締結時は締付けトルク安定剤等を給油しご使用下さい)

長くなってしまいましたが、Helico螺旋は疲労試験にて実証されていませんので今現在は「疲労し難そうなカタチをしている」だけとなります。