小さいものはDNAの二重螺旋構造、大きいものでは渦巻銀河まで、螺旋はさまざまな大きさやカタチで私達の身近に存在します。人工物の「ねじ」は世の中に多数存在する螺旋の中では少ない部類かと思いますが、人が作った螺旋の中では一番多い存在だと思います。

現在出願中の「雌螺子」の構造は、口元でのボルト疲労を軽減するため螺合するための螺旋に影響が無いよう条は変えずに疲労原因となる局所的な接触や横応力を完全に取り除くため、もう一つの螺旋を用いてフランク面上の二重螺旋構造としています。

フランク面上の二重螺旋構造

現在の規格である60度若くは55度山でのネジはとても良く出来ていて、ほぼ完成形をしていると思います。
数年前から三次元でモデリングと解析を繰り返す内に現行規格の潜在的な能力に気が付かされ、その能力を発揮させる方法を模索しています。

今回の出願はその一部になりますが、ボルトによる締結構造にはもっと多くの可能性が有り、いずれ各社から出される新たな技術により、より強くなると信じています。

40年前にネジに関わる仕事を始め、仕事でしたので作る事に専念していましたが、ある日「製造責任者としてネジを理解しているか?」と素朴なな疑問が生じ、それからネジの事を少しでも知りたいと思い続けていますが、奥が深くいくら学んでも知識が不足しています。また、ネジは計算で導く究極の三次元体ですので、その形状を正確に理解する事も難しいです。
例えば今回の出願も3DCADで似たモデルは簡単に描けますが実際に作るためには正確なディメンションを把握出来なければプログラミング出来ません。規格化された形状に沿って第二の螺旋を正確に規格化出来なければ、意味をなさないのがネジです。

漠然と考えては設計と失敗を繰り返し、今回の出願は振り返ればおそらく三次元を始めた頃に「ねじ屋だからネジのモデリングが出来ないと」と考えた所から始まっていたと思います。正解にネジが描けなければ生まれなかった発明です。

アイデアとしては、ひらめきの無いごく普通な形状ですが、ひたすらネジを追求した結果生まれています。

螺旋の追求はまだまだ・・何かに近づいている気がするので続けて行きたく存じます。上手く説明出来なく恐縮です。
デューラーが「見い出されず、ただ頭の中で理解されるだけである。」
と仰られていますが螺旋に向き合っていると、頭の中で見えない形状や断片的な線が浮かび何となく理解してもモデリング出来ない事が多々有ります。この先に何があるのか雲の中をさまようようで自分自身分かっていません。

ただ、可能性があることだけが分かります。

シンプルな一条の螺旋だからこそ持つ可能性も有ります。 Helico® PAT.P & Plus
*「Helico+」はおねじを含め同期を取るように開発中ですが難しそうです。・・金型が簡単に作れる方法でも見つかれば発表しますが、基本的に既存技術が有りますので発明ではありません。

螺旋の世界は壮大ですね

Fa-Headは形状は変わっていますが既存ボルト群より低コストで大量生産が可能ですが、Helicoは簡単であっても「追加工」が必要になります。旋削の場合は刃物が二種類必要になりますし、タップの場合は専用のカッターが必要になってしまいます。ただ、ボルトによるファスニング構造を考えた時にフランク面を仕上げたり”特性に応じてチューニングする”事はとても重要だと考えますので、強度が必要な締結部仕上には選択肢があっても良いかと思っています。
プラスで考えている事も航空宇宙産業向けでは標準形状ですが普通強度のボルト類には適用されません。
広く生活を支えるボルト類は理想を追求するだけでは成り立たなく、安全を保証しなければならない性格から必要に応じて現実的なオプションも必要だと考えています。

今後も、より低コストで安全を保証出来る”何か”を見つけて行きたく存じます。