パイプや垂木の締結に使う「パイプボルト」です。
50年以上前にジャングルジム用のボルトとして日東螺子工業(株)にて開発?され、同形状の部品がいまでも大きさを変え流動しています。
入社時の配属先が金型製作部門だったのですが、金型の作り方の説明や指導の無い会社だったので一番悩んだ金型になります。冷圧部門も営業部も妙に拘りの有るボルトで「真上から見て丸く、エッジは均等に」と指示が回ってくるのですが図面に寸法が記載されている訳でもなくダイス側のR寸法だけが決められていたのでパンチ側を作るのに、何を基準に加工したら良いのかサッパリ分からず、工場長から「前の担当者はこのバイトを使っていたと思う」とセーパーのRバイトを渡されただけでした。
教わった訳でもないので正しいのか分かりませんがマスター作成手順は、旋盤にて大きい方のRを球面加工する。(一点ものなのでハンドル操作と仕上はヤスリ)
そして工場長より支給されたバイトを用いてセーパーにて小さい方のRを加工。
上の状態まで機械加工したものを、万力にくわえヤスリで仕上げます。赤線部は削ってはいけないので「青竹」を塗ってケガキ線を入れてからやすって行きます。
上画像の状態になればマスターは完成です。ポイントは縁のエッジが綺麗な放物線を描くよう4ヶ所均等にRを補完して行けば大丈夫です。
最後にペーパーにR状の反りを付けてヤスリ目と不完全な面を除去して完成です。
・・30年前はこんな作り方をしていました。
今は多軸の加工機にて3Dデータから電極が作れるようになったので便利です。(ヤスリのマスターは半日がかりでした)
この製品の正確なディメンションを製品図と金型図にするため25年前に三次元CADが導入され、初めて3DCADで描いたモデルもこの製品でした。・・3Dに馴染めなく、その後4~5年放置していましたが、、
使い方は下の写真のように垂木等に使用するとピタッとするのですが、デザイン的には違和感がある感じになります。垂木に対してはザグリを施しトラス状の頭部で締結した方がスッキリした印象になると思います。
ただ、このボルトの特徴は薄肉パイプ等で使用しても穴の周りから変形しないので使い方によってはパイプ状や垂木を強く締結できます。
50年以上前の先輩が「子供たちが怪我をしないように」と拘った製品ですが、金型にしても冷圧セット時も簡単ではないのでよくカタチにしたと感心します。
ダイス側に形状を付ける製品は他にもありますが、ここまで回り込んでいるものは他に実績が有りません。パンチとダイスが最大限連携した製品となっています。
カタチは大きく異なっていますが、Helicoもパイプボルトも相手穴周囲を痛めず構造物を優しく支える所が似ています。ディテールに拘り立体的で滑らかな造形も日東螺子工業らしいと思います。
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