Fa-Head

お花のデザインねじ「Fa-Head」は、2015年に自宅でねじをモデリングしている際に当時三才だった娘がやってきて「パパのねじはいつも可愛く無い!お花のねじがいい!」と言われてしまいモデリングした事がきっかけでした。お花のデザインがCADの練習に向いていた事と駆動部の研究に向く形状だった事からFa-Headの開発が始まっています。

CAD練習用のお花のねじテーマでしたが、デザインの知識もセンスも無いので最初の頃はネット上のイラストや画像からデザイン参照し、アライメント性を気にするようになってからは、自然観察をして実際の花々や葉のカタチ・・曲線や曲面を取り入れるよう心がけています。Fa-Headでは頭部アプセットから上面アーチへの接続は接円弧で構成していますが、実際の花々も同じように連続した線や面で構成され花弁の重さを上手に分散しています。

デザイン的にはイラストや自然から学びましたが冷圧工程設計者ですので、娘のために最初に描いたモデルから数百のモデルに至るまで全て頭の中で鍛造性を考えながら設計していました。
現在の形状のようにアプセット中心から放射状に段差を設けた設計は2019年くらいから取組み鍛造未経験の形状で、とても鍛造性が良さそうだったため技術的な興味から、練習用モデルから変わり、本業での可能性を探るため一度は試作してみたいと考えるようになっていました。
2020年にコロナ影響で本業が減速する中、ロックダウン等も有り設計を加速させ、最期にヒントを与えてくれた“桜の花”の影響も有り初期モデルから5年後に最終デザインが完成し、CAE解析上初めて完全なアライメント性を示したので、初めて「試作の価値有り」と判断しました。

特許出願になった作用は5月に初めて実施した試作品の締め付け破壊での抵抗感が特別だったので、CAE解析結果を再検証する中で新規性を発見し10月に出願され、翌年の2021年5月に権利化されています。

4月に解析した不思議な応力分布結果ですが「解析のブレ」程度にしか思わず、優れたアライメント性を示していた事から試作に進み、後にある程度作用をまとめ出願・権利化していますが、未だ全ての解明はしていません。

ですので、私がデザインし開発し発明したと言うより、小さな女の子が発案し、自然がデザインをモディファイし、本来自然界が持つ作用がねじに取り込まれたボルトになります。冷圧性や駆動性含め、私は総合プロデューサー的な立場だったと思います。

下記形状のように限られた範囲内ですが、多くの偶然が重なり自然の法則と出会い必然的に生まれたボルト形状がFa-Headとなります。

皆さんが知っている通常のボルト類とは違った特別な特性を持ち、既存生産設備で金型さえ有ればヘッダー→転造だけで生産出来るボルトとなっています。

アーチ構造にて、軸強度を上回る唯一の頭部形状がFa-Headです。

PAT . 6877798

Helico

螺旋を利用するねじ締結構造では、
雄ねじにも、雌ねじにも同じ間隔の螺旋の溝が切られています。
螺旋をねじ込み締め付ける事で簡単、確実にモノをとめられる優れた構造ですが、
締付けにより力が発生すると、
軸力(モノをとめる力)は雄・雌それぞれの軸線に沿って発生し、雌ねじの入口(口元第一山)には”螺旋の末端”(コイルバネの端面と同じ)が有る事から、斜めに偏った応力が発生しています。
また、雄ねじは弾性が有り”伸びる性質”雌ねじは”伸びにくい性質”ですので、雌ねじ口元より頭部側のねじ山は伸び嵌合する一山目にあたる雌ねじ口元第一山付近には大きなストレスが発生します。
三角山で有っても台形で有っても”雄・雌がある締結ねじ”は全て同じように負担が生じています。

写真中央の雄ねじ外径に応力集中部が有りますが、ここで雌ねじの螺旋末端部と交差するように接触しています。
M8ボルト雌ねじ口元での静的引張り応力分布(変位量を強調しています・・強調率は0.5%非螺合部の開口角で判断ください)

雄ねじ疲労破壊の際は第一谷底の左右を繋ぐように破断し、ねじ山は中央の接触部右側に有るせん断応力が働いている位置で縦にせん断します。(谷底軸部とねじ山はそれぞれ方向の異なる応力が発生している)疲労破壊された雄ねじはほぼ同じ形状で破壊されますが、元々口元ではこのような応力分布になっています。

雌ねじ口元にて応力集中や偏った応力が発生するといろいろな問題が発生します。

  1. 締結時に締付け時に軸力が増し口元での一部接触が大きくなると、頭部を回転させる力とねじ面の間で抵抗となり、レンチで回した角度に対しねじの回転が徐々に遅れが生じ軸がねじられてしまう。
  2. 口元に応力が集中してしまい、その他のねじ山に力を分散しにくい。
  3. 応力集中と偏った応力が発生しているので疲労しやすい。
  4. 雄ねじの谷底開口が一部に集中してしまう。

上記1~4が発生すると、本来の強度が出せなかったり、ちゃんと締付けが出来なかったり軸のねじれにより戻しトルクがかかっているので弛みやすかったり、疲労によりボルトが折れてしまったりします。

普通の状態でも十分に強いねじですが、もし上記口元での問題が解決されればより強く弛まなく安全になりますので、上記の問題を解決するため雌ねじ螺旋末端に「導入部」を形成するようにした構造が「雌螺子」特許7129737になります。
発明の内容は簡単で、下の画像のように雌ねじ口元から角度の異なる第二の螺旋面にてヘリカル状に通常のフランク面を削除し、軸力が付加される面だけを上に徐々に小さくなるようにした構造となります。

この構造により軸力が付加された際に、口元で一部交差するように接触していた部分に触れなくなり、ヘリカル螺旋面は軸線に対し円錐状に展開されていますので軸線に対し雄ねじが真直ぐとなり、ヘリカル状の面なので徐々に応力が伝わる事で各山に軸力が分散されます。また、口元に近いほど接触面が小さいので実質的に軸力が延長され、ゆるみも出来る事からせん断方向に力が加わった際も、軸方向に力が加わった際もゆるみ難い構造となります。

雌ねじ螺旋の終わりを山角を変えることで雄ねじ谷径側にして、雄ねじ谷底開口を出来るだけ小さくしています。上記解析モデルは口元での応力比較用なのでHelico螺旋面を短く設計し解析したので若干応力集中部が発生していますが、Helico螺旋面を長くする事で応力集中を完全に分散出来ます。


また、下図のような断面形状ですので雄ねじ山頂にダコン等が発生した場合でもHelico螺旋により雌ねじ谷径はテーパー状の導入部が有りますので、引掛ったり、不安定な締付けトルクとならず締結が出来ます。

雄ねじ山頂のダコンやキズは無い方が好ましいですが、一般的に量産されるボルト類ではダコンゼロに管理する事は難しいので、ある程度ねじ部のダコンが許容できる構造にする事で安定した軸力が得られるようになります。(通常の雌ねじでは雄ねじ外径から接触するので口元で確実にダコンが干渉します)

実施はタップだと以下の形状で簡単に修正出来ます。(通常のねじ研磨機にて作れますが、専用の砥石と特別なプログラムが必要です)・・・オーダーしたら高価なモノだと思いますし、タップの外径はメーカーにより異なるので、Helicoタップも同じメーカーさんで作らないと意味が無いと思います。

Helico タップ

ある程度大きな雌ねじは、異なる角度のねじ切りバイトとプログラムを用意すれば実現出来ます。

以上、Helicoは雌ねじ螺旋面に導入部を設ける考えで「仕上加工」となります。問題が有って仕上げたくても仕上げられない雌ねじ口元付近のねじ裏側を仕上げることが出来る唯一の方法です。
タップであっても、その他の切削工具であっても、わざわざ加工しなければならなくひと手間増えてしまいますが丁寧に仕上げて頂く事で、ねじ本来の強さや性能を引き出せます。

タップは既存設備でも生産出来そうですので、それほど高価にはならないと思いますが、このタップで丁寧に仕上げられたねじの一つ一つは高級な質を持っていると思います。

そして何より、大切に仕上げて頂いたねじは、締結構造の可能性を広げてくれると思います。


PAT.7129737