技術的な発明の効果は記載済みですので、

新しい形状が何にお役に立てるかご説明します。

発明のきっかけは上のアイキャッチに使用した解析結果を見たことで「これでは大きな負担となる」

と思った事からです。

雌ねじの口元第一山にて大きな応力集中が発生したり、螺旋の末端部が有ることから偏った応力が発生する事は知識として持っていましたが、この解析の結果が衝撃的だった事と、位置関係が明確だったので「直せる」と感じたのが最初でした。

ココを直せば「ボルトは疲労に強くなる」ただそれだけを考えましたので、

一番の効果はボルトの疲労改善です。

ボルトの疲労改善の内容は、

・口元第一山での応力集中を減らす。(正確には第1山での力は発生しませんが”最初”は存在します)

・口元側螺旋末端部で発生する偏った応力の発生を無くす。

・口元付近での雄螺子谷底開口を出来るだけ抑え、非螺合部の開口と同期させる。

・上記に関連し非螺合部と通常フランク面の間で軸力に繋がりを持たせる。

以上4点がこの「ヘリカル状螺旋面」の固有の特徴になります。

応力集中を減らし偏った応力の発生を無くすことは一次的な疲労改善ですが、非螺合部との繋がりに関しては「弾性」を得る効果・・軸力を延長させる事を目的としています。
軸力が延長されより多くの弾性を得られれば非回転ゆるみ領域において有利となり、応力集中と偏りが無い性質と相まって一次ゆるみの低減、二次ゆるみの低減や管理しやすさ等の効果を発揮できます。
(”増し締め”の必要性を減らせ、トルク法による軸力管理を容易にします)

一般的に言われる「口元第一山での問題」と「口元から第3山付近までの応力集中」を同時に解決しています。

その他の効果として、ヘリカル状螺合面を座面より深く設定する事で「非接触な面」を設ける事も出来るので、より軸力の延長が可能な事と、構造座面に対して均一な接触応力を得やすくなります。
(非接触面は設定荷重で非接触ですが、過剰な軸力が発生した際にアシストをしてくれます)

以上、雄螺子にとっても雌螺子にとっても最も優しく強い構造の雌螺子となっています。

感じられる効果としては、締付けトルクが小さい、滑らかで口元でカジリ難い、雌螺子口元が損傷しない、ボルトが折れ難い、ゆるみ難い、等が有ります。

欠点は、締めすぎると簡単にボルトがねじ切れます。軸力に対しての締付けトルクが変化しますので、専用の締付けトルク管理表が必要です。これは利点でも欠点でも有りますが、そもそもトルク法が二次的な管理ですのでご理解お願いします。(必ず正常破断(ねじの真ん中)で切れるのでご安心?下さい)

*塑性域締めには向いています(一般の方は無視してください)

通常の雌螺子に対し追加工が必要になり「仕上げ加工」となりますのでご理解下さい。
仕上げれば強くなる。されど、仕上無い現在の雌螺子構造でも十分に機能しています。
ですので、この雌螺子はオプション的な存在として必要な際に施して頂けると幸いに思います。
もし、0.1秒を競う場合や、大切なものを締結する時、絶対的な安全を確保したい際など、より完全さを求められる時にご使用下さい。
モノづくりですので、仕上げるか?仕上無いか?はその時の判断だと思いますが、
手法が無ければ仕上げられない。

仕上げる手法の提供になります。

仕上げて頂く事で、
力の作用で導入部を持たなかった螺子構造に、導入部を与える事が出来ます。

もし、軸力が付加されるフランク面にもう一つの螺旋面を与えたら?

第二の螺旋面によりヘリカル状のフランク面を得た雌螺子

そんな考えから生まれたのが上記画像のヘリカル状のフランク面を持つ雌螺子です。

ヘリカル面により谷底開口に繋がりを持たせました。静的な応力では赤い線付近が新たな最初に強い応力負荷がされる山となりますが過剰な力を受けると座面側の山が機能します。ですのでこの赤い線からは破断しません。