アイキャッチ画像は未加工での口元1山付近の応力分布になり、メねじの口元には螺旋の末端部が有り、軸力が付加されおねじのネジ山が伸びて行くと、ここの部分で交差するように接触してしまいます。
この接触位置軸線上の反対側にはメねじ螺旋面の傾斜が逆向きとなっているので、接触と螺旋面の傾斜を支点にして軸線上に直交する左右に、おねじ谷底第一開口部が発生します。

軸力を最初に受ける部分での複雑な応力ですが、この位置関係が”ゆるみ”に関係が有る気もしますし、無い気もします。ナット等でクサビ効果を謳ったモノも発売されていますが、軸力が全てここを通過しているなら形状的にはクサビ状になっています。
ボルトの疲労破壊原因の65%程がここで発生しますが、挟まれシーソーのように揺すられる場所なので特別疲労しやすいのかと思います。ただ、転造タップにて加工されたメねじ口元螺旋面は変形により最終螺旋面は接触し難いと思うのでねじによる疲労はバラツキが出るかと思われます。(転造タップにて螺旋面末端部が変形しても最後の接触面がおねじ外径付近となる事に変化は有りません)

Helico形状によりこの接触や口元で発生する複雑な応力を全て回避すれば、当然クサビ効果?シーソー的な作用も無くなるので、外力に対して素直に回転するようになってしまうのか、各山に均等に力を分散出来るようなるので摩擦効果が確実になり回転しないのか、まだ分かっていません。

上記は後々調べるとして、
その他ゆるみに関係が有りそうな構造上の特性をご説明します。

口元1山目に有る接触部(おねじ外周付近)を非接触としたかった事から、メねじ螺旋面に円錐状の螺旋面を与えメねじ内径付近でおねじ谷径側と接触し終わる螺旋面とする構造としました。このため変換にはある程度の距離が必要で1山(M10で30㎜位)ほど使用して位置を変化させています。
必然的に応力発生位置が口元から遠ざかる結果となり、口元に近い位置の応力が低下するので構造座面上の接触応力が下の比較画像のように変化します。

未加工  ↔   Helico
(反力表示上面分布)

ボルトの座面側も局所的にしか加圧出来ないので一般的な構造でも問題は有りませんが、ゆるみで考えると局所的に発生する応力となり有効な面圧を保ち難いのでHelico加工した方が有利となります。
上記、反力表示での分布が加工前→加工後で大きく変化していますが、応力発生位置が口元から遠のいた事以外にも構造上の特性が有りますので、下の断面表示にてご説明します。(矢印は応力ベクトル(力の作用方向)を表します)

未加工  ↔   Helico

軸力により接続しているねじ山を通し軸力発生方向に向け引っ張られるので未加工の画像のように軸力発生方向へ向けベクトルが向くのが普通ですが、Helico加工さてたねじ山では逆に外側に向かいベクトルが発生しています。山形断面に傾斜を付けると作用点が変わるので、ねじ山をせん断するよう働いていた力が一部外側へ向けての圧縮応力と変化しています。口元から距離を離した事との相乗効果でベクトルを外側に向け結果として広範囲な反力が発生しています。ここはボルト側の伸びやすさにも繋がっています。積極的に弾性を利用する形状では有りませんが、作用点を変化させベクトル方向を一致させない事で口元付近で伸びやすくしています。当然、山断面が傾斜した位置ではフランク面の有効な摩擦は得難い。
どこで摩擦を得るか下の断面(比較変位表示)でご説明します。(緑色側が変位が多い↔青色が変位が少ない)・・局所的な変形では無く力の発生位置からの変位です。

未加工  ↔   Helico

未加工のねじは口元から上の部分に変位が集中し螺合部に入ってすぐに青色に同化していくように消えて行きます。一見こちらの方が自然な色合いできれいなのですが、これがネジの困った問題でネジが長くても多くの山に力を分散させる事が出来ない構造になっています。なので、いろいろな”ゆるみ止め”が出されます。基本的にネジは口元から三山程度までしか緑色に出来ないのが普通です。Helicoは無負荷時に非接触となる面?螺旋構造を口元側に持つので当然緑色がメねじ内部に入り込んでます。その後の円錐螺旋面は3山(10ミリだったら90㎜)分の長さを使い徐々に力を正規フランク面へと導くので伝えやすいと共に締結後の振動等で外力が加わった際に”なじみやすい”構造になっています。

伝えやすいと言っても見えませんので、
フランク面の摩擦は表しにくいので下に接触応力の分布を示します。

未加工  ↔   Helico

全て同じ条件での比較ですが、Helico側の円錐螺旋以降の通常山部の方が明るい色をしているかと思います。未加工は口元付近にかなり応力が集中するので口元から3山程度で減衰してしまいますが、Helicoは円錐螺旋面後の通常フランク面となってからあまり減衰しない特徴が有り、軸の伸びに合わせ螺旋上に力を伝える性質を持つようです。(軸力に応じて螺旋面上に力を伝えるのがネジ本来の特性のようですが、螺旋面上の伝達を阻害する部分が有ると伝わり難い)

以上が”ゆるみ止め”効果の可能性になりますが、Helicoの目的はあくまで疲労低減です。疲労のプロセスにはゆるみも入りますので ゆるみ止め作用も有った方が良いですが、ゆるみ止め製品は各社から優秀なものが出されていますので、絶対ゆるまない的な物は他社の物を併用下さい。・・・口元近くの軸力付加側螺合面に隙間が有るので接着系のゆるみ止めは良く効くと思います。

*口元側に非接触な螺旋を持つHelicoは通常の構造体用で、ナット等でめねじ構造体に耐力が無い場合は非接触面を設けるとよけい潰れるので円錐螺旋面だけで調整します。

当解析は新たに開発?入力したHelicoのパラメーターモデリングでのモデルの正しさを検証するためのテストで実施していますので、繰り返し検証まで実施されていません。メッシュが不適切以外は過去のモデルと同じ解析結果なので問題は無いかと思います。通常のねじモデルも同じ基本設定を使用しているので比較モデルを簡単に解析しやすくなりました。・・向きや位置まで同じに出来ます。