雌ねじ口元第一山での複雑な応力以外にボルトの疲労を考えていて、雄ねじの谷底の開口に自然な感じが無い事が気になっていました。
もちろん第一山での複雑な応力が原因でも有るのですが、たとえ応力集中部を除去しても第二、第三と移動するだけでは意味が無いので、口元での応力集中を避け雄ねじの谷径開口を徐々に導く形状を考えました。

上記画像は口元で接触しない山が1山で角度異なる二つの面が交差する面が4山にしてあります。(出願書の応力分布に使用したモデルは接触しない面が1山交差部が2山です。)交差部を長くする事で雄ねじの谷底側を押さえる面が長くなり(有効径✖️3.14✖️山数)非螺合で開口した雄ねじ開口が雌ねじの有効なフランク面へと徐々に変化出来ます。
この交差する螺合面を長くすれば軸力を延長する事にもなります。
そして、締結時に回転の妨げが無い事から正確な軸力を得る事が出来、その後の軸力管理の際もトルク法にてスムーズで正確な軸力を維持出来ます。

実際には非回転ゆるみでの一次ゆるみ要素の殆どは口元での複雑な応力集中の結果だと思われるので、増し締めはさほど必要無いと思います。

前のブログで全体の開口が小さく見えると書きましたが、実際には発明形状を用いると全体の伸びが大きくなるので平均すれば開口は大きくなっています。一部の開口が大きいので比べると目の錯覚を起こします。

非螺合部にての谷径部開口とHelico螺合部とが口元での横応力の影響を受けずに徐々に伝わる様子を、応力分布非表示から強い応力分布を一定の時間に沿って表示させた動画にしました。(軸の下から撮影しています)

最初に速い速度で軸中心に向かい渦を巻く動きが非螺合部になり、その後が口元第一山での横応力の発生なので普通は渦を巻く動作が途切れて、しばらくしてから弱弱しく渦巻き動作が始まるのですが、Helico螺旋面では連続した応力分布となっています。

ねじに働く応力の分布は螺旋に沿って分布していますので、断面等の平面的な捉え方では分からない事が多くなると思います。立体的なねじモデルでも断面解析だけでは応力分布が螺旋状に沿っている様子は観察されません。応力分布を徐々に表示させる等の手法を用いた時だけに現れます。この解析手法を用いてHelico螺旋を設計しました。力が廻っているのでは無く「分布が廻っている」=「力の伝わりが廻っている」なので出来るだけ上手に力を伝えられるよう第二の螺旋を与えました。・・解決策が他に無かった。(ピッチを変えフランク面を離してもダメ、フランク面に位相角度だけ付けてもダメ、徐々にはなりません。どうしてもヘリカル状の螺旋面が必要です)

口元での偏りは振幅の度に振り子のようにテコの原理にて雄螺子を回転させる力を発生させています。
疲労する場所で有り回転推力を生む場所でも有ります。・・最初は雌ねじ螺旋末端で消えて行くような小さな交差部ですが、軸力により面となり、振動が加わる度に成長を続け、立派な推力を生むようになります。

面をひとつ追加するだけのシンプルな形状を用いて、折れにくく、ゆるみにくくする構造の提供になります。



*注 静的解析の応力分布強弱を動画にしただけですので、動的な状態を示す動画では有りません。