アイキャッチ画像はステンレスSUS-316L材の穴開け加工前に使用しているM型断面リーディング形状(ドリルの案内形状)です。・・W型?一般的にはどちらで呼ぶのでしょう?
ステンレス、特に硬さがある316では刃先が被切体に触れ刃先を食い込ませて行く際に滑りが発生すると加工硬化が発生してしまうので、食い付きではドリル刃先が一瞬止まってしまい、さらに送られる事で一気に突入します。
一時的ですがドリルのプロフィールに合わない動作をしてしまい、その後の穴開け加工に影響するので出来るだけソフトにリードする形状にして有ります。
ステンレスはネバさの有る材料なのでドリルのプロフィールに送り速度が一致していれば、わりと簡単に穴開け加工が出来ドリルもかなり持ちます。
同じ事がステップ動作にも言え、刃先と同じ形状に加工された被削体にドリルを再突入させるとリーディング以上の抵抗になりますので、不必要なステップはなるべく避けた方が賢明です。どうしても必要な場合は後方に下げないで送りを一時停止させ給油とキリコ排出をさせ、再度送るようにステップさせると刃先付近では完冷を防げますので、刃先が損傷しにくくなります。
基本的にはノンステップをオススメします。
ただ、この経験はとても古いドリルで得た知識でお役に立てるか不安ですが、現代のドリルでも同じように使えています。
とても古いドリル
私が入社した当時は祖父が戦後の闇市で仕入れたドリルが大量に残っていて「七二式機銃、第二十八工事・・」と長い刻印が施されたドリルも残っていました。この兵器用のドリルの中に長年愛用するドリルが何点か有り、そのドリルで316を加工した時の経験が現在に引き継がれています。
優れた工具と使えない工具が混ざっていましたが、優れた工具に関しては現在でも十分に通じる能力を持っています。荒削りでしたが本当にコワイ国です。もし時間があったら洗練されさらなる脅威となっていたでしょう。
ドリルの性能は全てプロフィールで決まるので同じ太さでも3種類くらいはシャンクの形が違うドリルを持っていたと思います。コレクターにようにお気に入りを見つけるとキープしていたので、お気に入りのメーカーさんが廃業された時は「人生終わった」と感じたほどでした。
時は変わり最近のドリルはとても進化しました。
ある時、リーディングドリル90度を眺めていて「全ての設計が3D CADでされ、今はシャンク溝の形状も刃先形状に合わせて設計出来ている」事を知りました。先に刃先形状を決めてから溝を設計されているようです。これなら宝物のようにシャンクを大切にしなくても自由設計ですので、理想の刃先とそれに合わせた溝が出来ます。
超硬シャンクのおかげなのか、3Dモデリングの習熟度の成果なのか分かりませんが画期的な変化だと思います。
さらに、一部メーカーでは刃先で起こる事をシュミレート出来るようで、カタログ通りの条件でドリルを使うと、謳われている通りキリコが粉砕され、ものスゴイ速度で加工がされて行きます。
時代は本当に変わりました。
年寄りなので、少しさみしい部分も有りますが、大きな希望を感じます。
切削、特に穴開けを極める事は不可能でしょう。
でも、出来なかった事が今日出来るなら幸せに存じます。
ドリル愛好家としては、幸せな時代です。
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