出願では「【課題】雌螺子の口元付近において雄螺子との接触により生じる応力を低減し分散させることができる雌螺子を提供する。」となっていますが”接触“について説明させていただきます。雄ねじは連続した螺旋で構成されていますが、雌ねじの口元には螺旋の端部が有り螺旋と口元の面では交差する形状となっていますので、軸力が発生し雄ねじが軸線上に伸びて行くと雌ねじの口元の一部で局所的な接触が生じています。

締結時の口元の様子イメージ

上記画像の口元付近中央で雄ねじ外径一部に赤い応力集中が見られますが、ここで雌ねじの螺旋と雄ねじの螺旋が交差しています。雌ねじ螺旋末端なので本当に細くなって消えかけている部分なのですがCAEにて解析すると、ここが接触する事で反対側の螺合部と挟み合うように支点となり左右の雄ねじ谷底が開口します。この接触部には局所的に縦に割るようなせん断応力が発生しているので、ボルトが口元で破断した際に一部の山でスパッと切られたような状態が観察出来るかと存じます。

特に疲労を加えれば、上記画像の赤い線を繋ぐように左右を斜めに繋ぎ中央のねじ山が縦にせん断破壊される事になります。

元々一条同士の螺旋構造なので避け難い現象です。

発明の内容は「一条同士の螺旋接続にもう一つの螺旋面を与える事で雌ねじ側フランク面片側を2条にし、面接触を最後まで維持する事が目的」となります。

条自体に変化は与えないので一見一条に見えますが、カテゴリー的には「多条ねじ」になるかと思います。
*同じようにアプローチを変えれば多条ねじはいろいろなパターンが有るかと思いますし螺旋自体のカタチにはもっと可能性があるハズです。

交差する接触が無ければ、螺旋に対し均一な応力が得られるようになるので、口元疲労し難い構造になります。上記画像は先の画像と同条件での表示ですが谷底の開口が小さくなり局所的な開口も無くなっています。

以上、これが雌ねじ口元第一山での問題内容となり、発生原因のマクロ的な解析・分析とその対策が発明内容の基本となります。

谷底の開口が全体的に小さく”見える“理由は、次のブログにてご説明いたします。